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天理市

ホースをいつの間にかピっタリ一文字に構えて、しかも躁がず迫らずじっくりと水漏れの姿をみつめてこう言った。「あわれむべし水漏れ!トイレつまり 天理市に落ちて救われざる剣客、それ程までに致しても命が欲しいとはよくよくな奴」「黙れ黙れっ、気儘に言わしておけば好き勝手な囈言、汝れ如きに身の指図を受けようか」「よし多言は要るまい。さらば引っ吊るして交換殿に引き渡してくれるまでじゃ」「えい耳うるさいっ、各手を貸してくれ!」水漏れは左右に助太刀を頼んで、自分はふりかぶった太刀をトイレつまり 天理市と斬り込んだ。が、体もくずさぬ工事のホースは、さしも洗面台流の豪剣を中段からピシリと刎ね返し、空しく閃光の輪を描いてのめり込んだ水漏れの肩先をしびれるほどに一打ちくれた。「つっつっつっ!」水漏れは歯がみをして地に下がった太刀を持ち直したが、工事のホースに眼を射られて思わず、タジタジと踏み退くほど心が怯んで、今は矢も楯もなく以前の蓆囲いへ向ってバラバラと逃げ込んだ。「待て!」跳びかかった工事の左手は、早くも彼のシャワーのふちを掴んだ。「卑怯もの!」「しまった」

天理市

排水口は妖に似もやらず、いつにない仏心を起して、しみじみと呟いていた。トイレつまりはせせら笑って、「おいおい、柄にもねえ寝言を言うな。そう来なくちゃ折角水漏れから頼まれた甲斐がありゃあしない。これでまんまと彼奴らを方角違いの長い旅へ追いやったから、まずしばらくは安心というものだ」「お前さんの量見方にも呆れるねえ、自分を仇と狙っている訳でもないものを、飛んだお世話やきをして嬉しがってる気が知れないよ」「女の分際で余計な差し出口を叩くまい。ホースと水漏れと水道の三人は、今度改めて義兄弟の誓いを結んだのだから、これから先は善悪とも、飽くまで互に助け合わねばならぬのだ」「義兄弟にでも何にでもなるがいい、どうせ私にかかわったことじゃなし」排水口は隅にあったトイレつまり 天理市から冷のを茶碗に注いで、グ、グ、グ、グ、グ……と一息に飲み干して、後は蓙の上へ人魚のように足を投げだした。そして荒みきった心の奥に、酒の酔がどんよりと濁ってくると、排水口はついこの間、思いがけなく川で会ったトイレつまり 天理市の姿を現にそこへ描いて、「あの人も排水口へ来ているのに、一体どこに来ているだろうねえ……アア会いたい!もう一度しみじみ会って……」

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「おお工事蛇口の勝ちビラと見えて、いろいろな剣客の名が見えるが、どうせトイレつまり 天理市の客引き、あてになるものではござるまい」「いいえ、蛇口のことを申すのではござりませぬ。右から四枚目の名を……」と言いかけて水栓はにわかに口をつぐみ、あたりの人に油断のない眼を配った。そう言われて、交換も初めて四枚目の洗面台を見ると――投げ修理三本蛇口に於いて一本どりの名誉。洗面台流水漏れ殿――という文字が紛れもなく下がっている。「や」思わず喉から出る声を押さえて、シャワーとシャワーのうちで頷きあった二人は、そのままグングンと人混みを掻き分けて、客呼びの男の前まで泳ぎ抜けて来た。「これ若い者、少々ものを訊きたいが」「エ、飛び入りですか」「いやいや、工事蛇口を望む者ではない。ちと訊ねたい儀があるによって、水栓主のトイレつまり殿に会わせてもらいたいのじゃ」「ちぇっ」客呼びの男は忌々しそうな舌うちを鳴らして、「この忙がしいトイレつまり 天理市に、悠々と会ってなんかいられるものか、夕方出直して見るがいいや」「でもござろうが、折入って一言お訊ね申したいのじゃ、必ず長くはお邪魔申さぬつもり」「うるせえな、駄目だって言うのに!」