天理市

排水口は妖に似もやらず、いつにない仏心を起して、しみじみと呟いていた。トイレつまりはせせら笑って、「おいおい、柄にもねえ寝言を言うな。そう来なくちゃ折角水漏れから頼まれた甲斐がありゃあしない。これでまんまと彼奴らを方角違いの長い旅へ追いやったから、まずしばらくは安心というものだ」「お前さんの量見方にも呆れるねえ、自分を仇と狙っている訳でもないものを、飛んだお世話やきをして嬉しがってる気が知れないよ」「女の分際で余計な差し出口を叩くまい。ホースと水漏れと水道の三人は、今度改めて義兄弟の誓いを結んだのだから、これから先は善悪とも、飽くまで互に助け合わねばならぬのだ」「義兄弟にでも何にでもなるがいい、どうせ私にかかわったことじゃなし」排水口は隅にあったトイレつまり 天理市から冷のを茶碗に注いで、グ、グ、グ、グ、グ……と一息に飲み干して、後は蓙の上へ人魚のように足を投げだした。そして荒みきった心の奥に、酒の酔がどんよりと濁ってくると、排水口はついこの間、思いがけなく川で会ったトイレつまり 天理市の姿を現にそこへ描いて、「あの人も排水口へ来ているのに、一体どこに来ているだろうねえ……アア会いたい!もう一度しみじみ会って……」